当工房に製作の御下命が
平成21年10月31日から11月4日までの間、その美しい姿から「太平洋の白鳥」と称えられる白亜の帆船「日本丸」が佐伯港に寄港しました。この寄港に際して、佐伯市から日本丸への寄港記念品として当工房の神楽面が採用されました。記念品になった神楽面は、旧藩政時代から佐伯領内に伝わる「佐伯神楽」の「御綱」の舞に使われる綱神楽面の面相で、当工房が御下命をいただき、8月末から製作にかかっていたものです。
佐伯神楽「御綱」の舞とは
「御綱」の舞は綱神楽面を付けた舞手が縦横に張り巡らした晒し布を切っていく神楽です。これは、「スサノオノミコト」が「ヤマタノオロチ」を退治する場面をあらわしたもので、このスサノオノミコトという神様は、実は海の神様で、海運、造船などをつかさどります。このように、海のまち佐伯に連綿と伝わる佐伯神楽の神楽面は、海事思想の普及と海事の振興・安全を推進する「日本丸」への記念品として、図らずもまさに最適の贈り物と言えます。
入魂の舞で盛大に歓迎
入港の夜の歓迎レセプションの際、記念品であるこの御面で実際に「御綱」の舞を舞って、入魂をしたのち佐伯市から船長様に贈呈されました。日本丸の乗組員と実習生は神楽を大いに楽しみ、大変感動した様子で、歓迎レセプションにふさわしい御面の披露と入魂になりました。寄港中、船内をご案内下さった船長様のお話では、当工房が解説した説明書に基づいて、この神楽面の由来と働き、ご利益などを乗組員と実習生に説明をされたとのことで、大変喜んでいただきました。
当工房の栄誉ある船出に
千歳一隅のこの機会に当工房の神楽面が採用されたことは、この上ない名誉で、自信と責任とが相交わる万感を胸に、この御面の製作の間、終始大いなる感動と手ごたえを満身に覚えながら鑿を進めていきました。今回の御下命は、当工房にとりましても栄誉ある大きな船出であり、今後の面打ち活動という航海にとっての力強い励みとなりました。
当工房でお生まれになったスサノオノミコトの御面が本領である海の世界で、日本丸と船長様はじめその関係者を末永く祝福し見守っていってくれることを心からお祈り申し上げます。
この機会を下さった市の関係者をはじめ実行委員会の皆様、入魂の舞を奉納された宮司、祭員の皆様、そのほか各関係者に心からお礼を申し上げ、ご披露、ご報告といたします。